空き家の処分方針(前編)

空き家の処分方針

空き家の処分方針(前編)

処分方法は3つ…売却/リフォーム・リノベーション/賃貸

さて、ここまで空き家を放置するリスクや維持するコストについて説明してきました。

そう、自分で住まない以上は、空き家を処分する必要があります。

処分には主に3つの方法があります。


空き家の処分方法とメリット

処分方法 メリット
売却する 土地・建物を売却する。
所有権を手放し現金化できる。
リフォーム・リノベーションする 改修を施し、自分や親族が住む、あるいは賃貸にする。
所有権を手放さず、有効活用できる。
税金等のメンテナンスコストは引き続き発生する。
資産として残せる。
賃貸する 土地を有効活用し、貸しビルを建築し不動産収入を得る。
物件の場所や環境によるところが大きい。
多額の初期コストがかかる可能性もある(建築方式による)。
税金等のメンテナンスコストの体系が変わる(事業税)。
資産として残せる。

「空き家(土地)を担保に銀行から融資を受けられないか」と考える方もいますが、あまりお勧めできません。空き家に限らず築古の物件では、融資の担保としてはほとんど評価されません。運よく担保にできてお金が借りられたとしても、土地や建物に銀行の抵当権が設定されるので、家を建て直したり売却したりする際には、一度、その時に受けている融資金を全額返済する必要が出てきます。

自分の資産としての利用方法を銀行に縛られるかたちになるので、有効活用から遠のくといってもいいでしょう。


なお、売却や賃貸にする場合は、各自治体が運営する「空き家バンク」に登録しておくことで、買い手・借り手がつきやすくなります。

あわせて活用していきましょう。

売却する

自分や家族で住む予定がなく、活用の仕方も思いつかないのであれば売却して資金化する手段があります。

売却にあたっての注意事項

対象 注意点
戸建て・マンション共通 相続物件の場合は共同所有者の同意が必要。
「持分買取業者」にはご注意。
戸建て 「建物を解体して土地のみ売却する/解体費用を差し引いた値段で売却する」の2パターンがある。
解体時には立ち会うことが望ましい。

売却の場合は区分所有者の同意が必要になります。親の物件を兄弟で相続した場合、片方が売りたくないという場合もあるでしょう。その場合は、共同所有者に対して買取を要請することもできます。

兄弟等の親族での売買を「親族間売買」と言います。購入資金として住宅ローンを組むことは可能ですが、一部の銀行は親族間売買を扱わない場合もあります。扱ってくれる銀行であっても、仲介業者を挟んで重要事項説明書、売買契約書を作成することが条件となるケースが一般的です。


なぜかというと、不当に安く売買が成立して将来的に贈与税が課せられ、買い手が返済困難になることを防ぐためです。

親族の売買にあえて仲介業者を介入させ、手数料を払うのを嫌がる人もいると思いますが、後々のトラブルを避けるためと考えましょう。



また、近年「持分買取業者」を名乗る不動産業者が見られるようになりました。

共同所有相手が買い取ってくれない場合に、自分の持分相当額を買い取ってくれる不動産業者です。

使わない不動産の資金化をしたい人には魅力的に見えますが……そのあとは「悲惨」です。

具体的にイメージしてみましょう。相続によりABという兄弟が1/2ずつ持分を持ったマンションがあるとします。現金が欲しいAが持分買取業者Xに自分の持分を売ったとしたら、Xは何をするか。

見ず知らずのXと一つの物件を持ち合うことを嫌がったBに対して、割高な値段でXの持分の買取を迫るでしょう。あるいは逆に、Bから不当に安い値段でBの持分を買い取ろうとするかもしれません。

そして、こういう「持分」がある場合、往々にして区分所有者は「親族」です。ABに修復不可能な禍根が残るであろうことは想像に難くありませんよね。

最近、電車の中にも広告を見かけることがありますが、「持分買取業者」には注意が必要です。


これらに加え、戸建の売却においては、築年数が10年未満の物件であれば建屋ごと売れる可能性が高まりますが、それ以上になると建て直しを視野に入れる必要がでてきます。

商業地域に近い場所で、土地の面積が相応に広ければ、商業・事業用物件のニーズに繋がるので、更地にしていた方が喜ばれるかもしれません。

建物の解体費用は所有者の負担になるので、建物が残存しているかどうかは売価にも影響します。

不動産会社と相談して良い売り方を考えてみましょう。

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