空き家の処分方針(後編)

空き家の処分方針(後)

空き家の処分方針(後編)

自分で住まないならば、リスクやコストを考えると、空き家を処分する必要があります。

リフォーム・リノベーションする

リフォームの場合

日本にある空き家のうち、約40%は「ただ住んでいない/使われていない家」といわれています。これらの多くは、現状のままでは居住するのも難しいため、売却しないのであれば2つの方法が考えられます。

  • ・リフォームして親族が入居する
  • ・リフォームして土地・建物を売却する
  • 各自治体において、防災や治安維持、景観保護、地域活性化などの観点から空き家対策を進めています。そのため、空き家対策になるリフォームや解体工事に対しては、市区町村から補助金が出る場合があります。
  • 補助金の性質としては、所有者に対するよりは、業者に対して交付されるものが主です。各市区町村で確認してみてください。

  • リフォームして親族が入居する場合は、所有権や費用負担に注意しましょう。
  • 空き家物件の入手方法の半数以上が相続によるものといわれていますが、他の親族が相続した物件に所有権を持たない親族が住むと、贈与等の税務上の指摘を受ける可能性があります。
  • 親族間でも持分の売買契約書や賃貸契約書をかわしておくことをお勧めします。

  • リノベーションの場合

住居の老朽化部分を修繕する程度の簡易な工事をリフォームというのに対し、水回りなどの構造物も変更して元々の性能以上の住戸にする工事をリノベーションといいます。

戸建ての場合は、既存建物の建築確認書や図面が整っているか確認し、既存不適格ではないか、再建築可能かという点の確認が必要になります。

既存不適格物件

    • 建築当初は建築基準にのっとって建設されたものの、建築基準法やガイドライン、都市計画の改定により最新の基準では建築基準を充足しなくなっているもの。

    • すぐに違法建築とされるものではないが、リフォームする範囲(広さ)によっては、最新の建築基準に合致するような修正工事を課せられることがある。

    • 建蔽率・容積率がオーバーしている場合や土地のセットバックを要する場合は、解体するしかない(再建築不可とされる)場合もある。

相続物件の場合、建築当初の書類が不足しているケースも少なくありません。資料が足りない場合は土地家屋調査士による調査と再申請が必要になる場合があります。

なお、マンションの場合は、管理規約等にリフォームやリノベーションに関する制約が記載されている場合があるので注意してください。

賃貸物件にする


土地活用の場合

戸建ての場合、空き家を解体し、マンション棟や雑居ビルを建てて賃料を得る方法が考えられます。マンションの初期費用よりも多額の初期費用が想像されますが、そのカバーする方法もあります(いずれの方法も「売却」とは異なります)。

立地条件に見合った方法を選ぶとよいでしょう。


賃貸物件の建て方

方式 内容
自己建築方式 ・自己資金で建築する。
・初期費用の負担が大きい。
事業委託方式 ・デベロッパー等に建築・開発業務を委託する。
・利益の一部をデベロッパーに収受されるが、初期費用はかからない。
定期借地方式 ・デベロッパー等に長期間の借地として貸し出し、安定収益を得る。
・事業用定期借地の場合は10~20年、建物譲渡付き定期借地権は30年、一般定期借地の場合は50年と長期的な契約になるため、自身の相続も視野に検討する必要あり。
土地信託方式 ・土地を信託銀行に信託する。
・いったん所有権は信託銀行に移るが、信託期間終了後は戻ってくる。
・信託期間は数年単位のため、運用実績の上がらない土地はすぐに戻されてしまう。
等価交換方式 ・土地の一部をデベロッパーに売却する代わりに、同額相当の建築物の所有権を受け取る。
・土地の一部は失うが、初期費用はかからない。
建築協力金方式 ・先に入居するテナントを募り、建築費の拠出を受ける方法。
・建築後に入居してもらったあとの賃料から、当初の建築協力金の一部を差し引いて返済していく。
・テナントが事業撤退した場合の処理にリスクが残る。

なお、不動産収入を得るようになった場合、確定申告が必要になります。物件も住宅用地ではなくなるため、固定資産税の措置も変わります。具体的な税制面の変更については税務署・税理士にご相談ください。

マンションの場合

マンションの空き家の場合、リフォームして他の人に貸し出すことで空き家問題を解消することができます。

既にマンションとして住宅ニーズがあり、管理組合・管理会社もあるため、空き家を持っているというリスクのほとんどがカバーできます。

一般的に、リフォームするための初期費用、賃貸借契約締結後もエアコンや水回りなどの不具合の修繕費用といったところは所有者負担となります。周辺相場とも確認しながら、税金等の最低限の維持費を回収できるように賃料を設定する必要があります。


賃料収入を得るようになった場合、確定申告が必要になるのはマンションも同じです。税務面への影響については税務署、税理士に相談するようにしましょう。

「これぐらい、節税対策でよくあるでしょ」と相談を怠る人もいますが、万が一申告逃れとされた場合の追徴課税は、数年分の家賃収入に匹敵することもあります。

ちなみに…

住宅ローンは基本的に団体生命信用保険の加入が必須となっているため、相続のように債務者が亡くなっているならば、その物件の住宅ローンは完済され抵当権も抹消されます。 生前贈与や離婚などで物件を入手し、かつその物件の住宅ローンも引き継いだ場合(債務引受)は注意が必要です。 基本的に住宅ローンが残っている物件を賃貸物件にすると、住宅ローンの全額返済を求められます。 賃貸だけではなく、リノベーションにより事務所としての利用をするなど、「自分の住宅」以外の利用と看做されると、契約違反とされる可能性が高くなります。 「不動産オーナーになれてラッキー」とならないように、ご注意ください。

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